努力と根性のサイエンス
シジュウカラが鳴き声を組み合わせた文章で話していることを世界で初めてつきとめた生物学者によるエッセイ。
生き物好きの少年がバードウォッチングに目覚め、その研究対象を鳥に絞り、最終的には「動物言語学」という学問分野を切り開くに至るまでが綴られている。
軽やかで親しみやすい文体でユーモラスに書かれているが、文章の端々から漏れ出る筆者の狂気に戦慄する。爆笑しながら「こいつやべえ・・・」と慄き続けていた。こういうやばい人は大好き。
実験のために一人山小屋にこもっているときに、米以外の食料(調味料も)がつきてしまったものの、食料の買い出しのための2時間がもったいない(2時間あれば実験ができる)という理由で買い出しに行くことを諦め、①普通のごはん②お湯をかけたごはん③水をかけたごはんのローテーションでしのいだというエピソードに、「こいつは狂っている」と確信した。「狂っている」というのは必ずしもネガティブな意味で言うわけではないけど、なにかに夢中になって食や健康を犠牲にする人はやっぱり狂っているんだと思う。若いときには誰しも多かれ少なかれそういうことはあるけど。
気付いたこと、ひらめいたことを、必ず科学的な手法を用いて証明し、論文を発表することで世界に訴えていくという一貫した姿勢には感銘を受けた。「シジュウカラが言葉を話している」という著者自身にとっては当然のこととして理解していることを、地道な実験の繰り返しで証明し、ちゃんと権威のあるジャーナルに論文を投稿して採用されることで世界に認められていく。学者としては当たり前のことなのかもしれないけど、果てしのない大変な作業だ。サイエンスとは努力と根性の世界なのだなと改めて知った。
初めて国際学会に参加するくだりはわたし自身の初国際会議出席の経験と照らして共感できたが、あとはひたすら驚嘆と尊敬と畏怖。こういう情熱と狂気を持った学者さんがいるという事実にはほんとうにワクワクする。
最終的に「人類を啓蒙しなくては」と言い出したあたりではやや本気でひいたが。