時間と旅と日常の半生記
実家に向かう電車の中で、「駅から徒歩138億年」(岡田悠)を読み始めた。岡田悠さんといえばポッドキャスト「超旅ラジオ」が好きでよく聞いている。「超旅ラジオ」での岡田さんはシャイで人見知りな雰囲気ながら大胆な行動力と突然発揮される強コミュ力のギャップが面白い。ラジオで話しているときはややドライで冷静な目で周りを観察している感じもあるのに文章となると途端にウェットでエモくなるのも印象的。本書は多摩川を河口から源流まで歩いた記録「川歩記」を中心に、25年前の子どもたちの道草の道をたどったり、17年前に2秒だけ見えた海を探したりなど、場所と時間をテーマに日常に潜む旅を記したエッセイ集だ。日付が入っているものを読むと、読みながらこのとき私は何してたんだっけ?とつらつらと自分の記憶も呼び覚まされてくるのも面白かった。文体につられるように、自分の記憶までややウェットでエモく感じられる。電車が駅について、本を閉じなければならないのが残念。
午後はビールを飲みながら「駅から徒歩138億年」(岡田悠)の続きを読んで読み終わった。
多摩川の河口から源流までをたどる旅の最終盤、岡田さんが山道で遭難しかけるくだりは、かつてソロ山行を趣味としていた人間としては、状況を想像すると恐ろしすぎて心臓がバクバクした。(岡田さんは無事に下山してこれを書いているんだから大丈夫大丈夫)と自分に言い聞かせながら読み進めた。生きて帰ってこれてよかったよ。
本書は多摩川沿いを歩く「川歩記」を中心に、岡田さんが様々な媒体で書いてきたエッセイを「旅」と「日常」と「時間」をテーマにまとめたものだが、18歳から現在までの岡田さんの半生記とも読めた。ひとり故郷を出て東京に向かう新幹線で泣いていた18歳の青年が、寮生活を経て、世界中を旅して、就職して、家庭を持ち、フリーランスのライターとして生きるようになった今に至るまでの物語。読みながら、自分が大人になってから今に至るまでの日々を思い出したり、私ももっとあちこちに出かけたいし、もっといろいろ書きたいなとずっと思っていた。今年はよい読書スタートとなったな。